ロシア武術システマは、
護身術にとどまらず、心身のパフォーマンスを引き出すことができる、
大変有益なトレーニングシステムであると、解説してきました(↓記事参照)。
それほど有益であれば、
今すぐにでも始めてみたい方、試してみたいという方
がいることと思います。
そのようなシステマへの好奇心を止められない方々に向けて、
今回は、システマが機能するのに重要な4大原則について、解説します。
(大げさでなく、この4大原則を満たせば、大体の問題が解決します。)
さらに、4大原則を満たすためのトレーニング例も紹介しました。
4大原則について、実際にどのように対応すればよいか、理解の助けになれば幸いです。
日本で最古参のシステマの先生から修業を受けており、一応システマを正しく理解している者です。
1.システマで重要な4大原則
はじめに、システマを簡単に説明すると、
ロシア古来より伝わる武術を元に創始された、心身のパフォーマンスを引き出すためのトレーニングシステムです。
近接格闘術、身体操作方法、リラックス・健康法などを含み、それらのスキルは、過酷な状況をサバイブするのに有効です。
上記の3つのスキルを機能させるためには、
4つの重大原則を満たす必要があると言われています。
・呼吸する
・リラックスする
・良い姿勢をとる
・動き続ける
たったこれだけです。
しかし、危機的な状況では、無意識の内に、これらの原則が満たされていないのです。
まず、この事実を認識しなくてはいけません。
システマ習得の課題の1つは、
どのような状況でも、4大原則を満たして、対応できるかどうかなのです。
システマを発動させたいのであれば、
まずはこの4大原則を満たして、行動することを心がけましょう。
それでは、各原則の留意点について解説していきます。
1-1.呼吸する
驚いたり、恐怖を感じているとき、呼吸は浅くなるものです。
これは、筋肉や身体が強張り、肺の動きが自由でなくなるためです。
これを解消するためには、意識的に呼吸を正常化させ、
肺を無理やり動かしてあげることが効果的です。
肺がされ自由に動くようになってくると、しだいに身体の強張りが取れてきます。
意識的に身体の強張りを取り除くことは難しいですが、
平常時の呼吸または深呼吸を行うと、自然と強張りを取り除くことができます。
呼吸は、心身の状態を良い方向に導く制御装置と言えるでしょう。
1-2.リラックスする
当たり前ですが、恐怖を感じているとき、リラックスはしていないでしょう。
しかし、危機的状況では、むしろリラックスしなければなりません。
ここでいうリラックスは、
隙を見せるような脱力した状態でなく、
心に余裕があり、身体に余分な力みがない状態を指します。
恐怖で身体がすくんでいないほうが、
良いパフォーマンスを発揮できることは、明白ですよね。
危機的状況では、まず、
このマインドを思い出すこと、正常な呼吸ができることの2つを押さえましょう。
これができれば、”思考と身体のコントロールは効く!”ということに気づき、
より冷静になれ、リラックス状態になれるのです。
なお、リラックスの精度は、
システマのトレーニングや日常的生活における実践の積み重ねによって、高められます。
自身の緊張箇所やその要因を検知する感性が養われ、
リラックスによる成功経験から自信が生まれるのです。
このように、リラックスはパフォーマンスを引き出すために必要不可欠なのです。
1-3.良い姿勢をとる
恐怖を感じると、姿勢が悪くなります。
これは、筋肉の緊張と身体を守ろうとする反応によるものです。
姿勢を良くすると、次のメリットから、リラックスした状態が保たれやすくなり、
結果としてパフォーマンスが引き出されるのです。
筋肉や関節において、局所的な負荷が生じにくい
構造的に現状で、心身ともに安定性が増す
戦闘の際は、良い姿勢を心がけ、
仮に崩されても、相手に抗って姿勢を修正するよりも、
ただ自分自身が良い姿勢になることを意識しましょう。
相手を押しのけようとすると、身体に緊張が生じやすくなります。
1-4.動き続ける
恐怖を感じると、心身が緊張し、動きが鈍くなります。
こうなると、脅威から回避することができなくなります。
一度動きが止まってしまうと、
再度動き出すのに、より多くのエネルギーが必要となります。
そして、動き続けることは、心身の緊張を抑えることにも繋がります。
戦闘においては、動き続けることは相手に的を絞らせない効果があります。
常に足が動きやすい状態にあるため、攻撃を受け流しやすくもなります。
さて、ここまで読んでいただければ、お気づきと思いますが、
私たちは、脅威に対して恐怖を感じると、自ら心身の状態を悪くさせるのです。
4原則は、自分で自分の首を絞める、このような状態を打破するための項目なのです。
中でも、呼吸は、心身への影響が強く、最も重要とされています。
呼吸を正常に戻さずして、全てがうまく機能しないのです。
2.4大原則を満たすためのトレーニング例
この4大原則の重要性を体感できるような、トレーニングを1つご紹介します。
設定:向かい合って座っている相手から、急に腕を押さえつけられる
この危機から脱出してみましょう(画像はこちらから引用)。
瞬時に4大原則を満たします。
基本的に、呼吸を起点として行ってください。
急な出来事に、息を飲んでしまうかもしれません。
飲んだ息を瞬時に吐き、正常な呼吸へ戻しましょう。
身体の硬直が取れにくいならば、
バーストブリージング(下の記事参照)をしながら対処していきますしょう。
相手の脅威や、与えられる力に呼応する必要はありません。
リラックスして心身の緊張を抜きましょう。
現状況の場所を、空間的に感じるようにしましょう。
自然と視野が広がり、心に余裕が生まれます。
もし状況が好転するものがあれば、利用しても構いません。
腕を押さえつけられて、身体が強張り、姿勢が崩れているでしょう。
呼吸によって、体内の圧力が大きくなることを利用して、良い姿勢にしましょう。
このとき筋力を使って、良い姿勢にしようとしても、
相手の押さえつける力とぶつかってしまい、うまく戻せません。
リラックスして、身体から力みを除くことで、相手とぶつからないようにできます。
動き続ける
まず、相手が拘束しようとする力が身体に伝わってくると思います。
その力を受け止めず、利用しましょう。
その力を受け止めないことで、相手の支えをなくし、不安定にすることができます。
相手がくれたエネルギーを起点に、
緊張せず動き続けられれば、そのまま自由に相手をコントロールできるでしょう。
動く際は、相手に掴まれた手は意識せず、
良い姿勢を意識して、身体の中枢から動くようにします。
呼吸によって身体の圧力を高めておけば、さらに動くのが楽になるでしょう。
<相手の力を利用できない場合>
リラックスして緊張を解けば、手以外は自由に動きます。
動く部分から自由に動けば、
相手にぶつからないように動けるようになってきます。
ちなみに手を動かしたければ、目的を変えます。
手の拘束を解こうとするのでなく、
その手で何か別のモノを触りにいくような感覚で動きます。
※手の拘束を解こうとすると、
相手を持ち上げるような力がはたらいてしまい動かせません。
このように、4原則を満たせば、拘束を解くことができます。
何かやり方があるわけではなく、相手からの悪影響を受けず、
リラックスして正常な動きを取り戻すだけでよいのです。
4原則を満たせば、あとは状況に応じて、
自分がより快適に向かうように自由に動いて下さい。
この臨機応変さが、システマに型がないと言われる理由なのです。
3.まとめ
システマを行う上で、重要とされる4大原則と、
実際にその原則を満たすのにとるべき行動を解説してきました。
リラックスする
良い姿勢をとる
動き続ける
人は脅威に対して恐怖を感じると、自ら状態を悪くさせる。
4大原則を満たして状態を改善すれば、パフォーマンスを引き出すことができる。
危機的状況に備えて、鍛えたり、技を覚えるということは確かに有効ですが、
自身でパフォーマンスを抑制してしまっていること、
そして、その解消方法を知らずに過ごしていると、
身体に蓄積する負担に気づかず、いつか怪我をしてしまいます。
心身へのストレスを少なくし、より健康にサバイブしたければ、
この事実を知り、4大原則を満たすことを意識して、過ごしてみて下さい。
最後に、
本ブログは、システマを習得するための知識的な情報を発信していますが、
”百聞は一見にしかず”
4原則を満たした良い状態というものがどのようなものであるか、
実際にシステマを体験しに行くことをおススメします。
以上~