某システマ芸人のメディア露出を発端に、
多くの方が、ロシアの武術”システマ”を耳にするようになりました。
「ロシアの特殊部隊で教えられている?」
「痛みを感じない?」
「驚異の脱力パンチ?」
といった噂から、
他の格闘技とは異質なものとして、認識されているかと思います。
ネタにしやすい部分だけが一人歩きし、
システマの本質を理解されていない現状が、多く見受けられます。
(認知度が上がっただけでも喜ぶべきことなのですが、
ほんとは、もっと深く素晴らしいものということを知ってほしい~!!)
そこで、
本記事では、システマの本質とトレーニングの実態をまとめてみました。
わかりづらい内容があるかもしれませんが、
”システマに取り組む意義”や”強さの秘訣”を少しでも理解いただけると幸いです。
さらに、ちょっと習ってみたいという方向けに、
”トレーニング例” や ”習得する難易度” についても、触れてみました。
日本で最古参のシステマの先生から修業を受けており、一応システマを正しく理解している者です。
システマ洗脳TVでは、素人の疑問に答える形で解説↓
1.システマとは
ロシア語でСистема(英字Systema)と表記し、システム(体系、組織、制度など)を意味します。
ロシア古来より伝わる武術を元に、元ロシア軍特殊部隊将校のミカエル・リャブコ氏が創始したトレーニングシステムです。
1-1.心身のパフォーマンスを引き出すトレーニングシステム
システマの武術を習得することで
身体の生理学的機能(パフォーマンス)と、
人間存在の3つの側面(身体的、心理学的、スピリチュアル(ロシア正教)的)
を高めることができるとされています。
戦地・人質奪還、武装解除などの
物理的にも精神的にも困難な局面を乗り越えられることを背景に生まれたシステマは、
近接格闘術、身体操作方法、リラックス・健康法などを含む、
とても実践的なものであり、心身のパフォーマンスを引き出せるようになっています。
1-2.基本概念
システマには、いくつかの重要な概念があります。
①サバイブするための武術
システマで学ぶ武術は、
できるだけ争いを回避すること、
戦いに勝つよりもサバイブする(生き延びる)こと、を目的としています。
たとえ、戦いに勝ったとしても、深手を負ってしまっては、
今後の人生に影響が生じ、心身ともに快適に過ごすのが難しくなるでしょう。
心身を高次元に保つノウハウ、サバイブするノウハウが詰まったシステマは、
ストレス社会を生きる現代人にとって、
護身術だけでなく、リラックス・健康法として、大いに有益なのです。
②非破壊
サバイブを優先するため、不要な戦いを避け、傷を負わないようにしなければなりません。
そして、これは相手に対しても同じです。
戦いが起きたとしても、
システマの格闘術は、相手の肉体や精神を傷つけることを目的としていません。
戦いを終わらせるための効率的な手段を選び、必要に応じて相手をコントロールします。
相手を不必要に破壊することは、戦いに勝ったとしても、相手の恨みを買うことになり、
戦いは終わらないでしょう。
そして、システマのトレーニングで、防具が不要なのは、
非破壊的な格闘術、むしろ怪我の原因である緊張を取り除く格闘術であるからなのです。
③根底にはロシア正教の信仰がある
システマのルーツは、ロシア正教会のキリスト教の信仰にあります。
その信仰では、
私たちの身に起こる全てのことは、
自分自身を理解しつつ、状況に応じて、できる限りの最善を尽くすことです。
システマのトレーニングは、
様々な状況で自分ができること、自分が最善を尽くすべき状況
を理解するための、最高の環境でなければならないのです。
④4つの基本原則
近接格闘術、身体操作方法、リラックス・健康法として機能するためには、
まずは、4つの基本原則を満たすことを推奨されています。
・呼吸する
・リラックスする
・良い姿勢をとる
・動き続ける
次の記事で詳細を解説していますので、ご参照ください。
システマには、決まった型や技がなく、柔軟で自由な動きが特徴的です。
それは、これらの4つの原則により身体的なパフォーマンスが究められ、
技はその後に無限に生まれるからです。
システマ大阪の大西さんの言葉を借りると、
多くの武術は、技や型を覚えて、強くなるといったアプリをインストールするようなもの、
システマは、人間のOS(ハード部分)の機能を高めるものである。
したがって、システマは、全ての動きの底上げが期待できるのである。
始めた当時、私にとっては、これはキラ―ワードでした。
何かパフォーマンスに取り組む方なら、これを聞いて、気にならない人はいないでしょう^^
大西さん出演のシステマをレポートした番組がとてもわかりやすいです。
ぜひご覧ください!
1-3.その他の豆知識
ここまでで、システマは、人間のOSをアップデートし、
心身のパフォーマンスを引き出すことができるものということは、ご理解いただけたかと思います。
一方で、心理学的な側面、スピリチュアル的な側面はなかなか理解されがたいかもしれません。
システマは、自分自身の状態を理解し、
緊張をコントロールして、真のパワーに変えられなければ、習得することができません。
システマを世界に公開し、各地で普及活動を始めた当時、まだ名前はありませんでした。
しかし、普及させるためには武術としての名前が必要でした。
その名前の第1候補が
「poznai sebia」または「Know Yourself」(日本語訳で、汝自信を知れ)でした。
これはシステマに取り組む際の心得と、取り組んだ先に得られるものから名づけられました。
システマのトレーニングを行う中で、
自分の長所と短所が何であるかを知ることに留まらず、
自己の限界を十全に把握し、
人間の生きる目的を見つめるのに必要な ”謙虚さ” と ”純粋性” を育むことができるのです。
システマを続けると、知らず知らずの内に、
自分に正直になれ、進みたい方向性が見えてくるような気がします。
2.実際のトレーニングについて
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ここからは、システマのトレーニング内容について触れていきます。
さまざまな状況に対応できる、実践的格闘術である所以がわかってくるかと思います。
2-1.目指すべきもの
システマのトレーニングシステムによって、下記の要素をもった戦士の育成が目指されています。
モスクワ本部公式ではこのようになっていますが、現代人は戦士になる必要はありません。
段位や試合、ユニフォームもありません。
人それぞれの目標(護身術を身につけたい、健康のために運動したいなど)で、
マイペースに取り組めるところも、自由でオープンなシステマの良いところです。
2-2.養われる能力
システマをすると、多岐にわたる能力が身につきますが、
主要で代表的なものを紹介します。
①様々な状況への柔軟な対応力
トレーニングに決まったパターンはなく、さまざまな状況を設定して、
4大原則を中心に、ストレスを脱していく練習を行います。
このような練習を積むことで、自然と、冷静かつ柔軟に対応できるようになってきます。
多人数が覆い被さった状況からの脱出ワーク、模擬ナイフを使ったワーク、暗闇で襲われるワークなど
②ぶつからない能力
システマは、力に対して力をぶつけることはありません。
力をいなしたり、異なる種類の力を作用させるといったトレーニングによって、
ぶつからない能力が身につきます。
この能力は対格差をものともしないため、護身術として老若男女に有益です。
相手からのプッシュをいなすワーク、掴まれた際に対処するワークなど
③緊張をコントロールできる健康な身体
トレーニングは、常に自分および相手の緊張を感じ、
それを弛緩させる(リラックスさせる)ような練習を繰り返します。
これによって、自然に日常でたまった緊張が取り除かれる他、
自身で緊張をコントロールし、心身のストレスを改善させられる能力が身につきます。
近づいてくる相手への対処ワーク、相手に抑えつけられた際のワークなど
字面だと、どんなトレーニングだよ?と思われるかもしれませんね^^;
詳細は今後紹介していきますので、乞うご期待ということで。
システマは日常全てに応用できるため、トレーニング方法も無数に設定が可能です。
パターン化していないところが、システマのおもしろさの1つです。
2-3.難易度
システマ習得の難易度は、継続すれば必ずできるようになるというところでしょうか。
はっきり言うと、システマは心身の基礎から改善していくので、
護身として機能するまでに、時間がかかるかもしれません。
即席で強くなりたい方は、
技を覚えたり、身体を鍛えたほうが手っ取り早いと思います。
しかし、システマは、筋力を必要としないため、一度身につけてしまえば、
過酷なトレーニングなく、無意識的に発動できるでしょう。
人生100年という長い目で見れば、
併用でもよいので、身につけておく価値は大いにあるかなと思います。
心身をリラックスさせ、快適に動けるためのトレーニングなので、
継続するハードルが低いことを考えると、難易度は低いと思います。
まとめ
システマの本質と実際のトレーニングについて、解説してきました。
ロシア古来より伝わる武術を元に作られた、心身のパフォーマンを引き出すためのトレーニングシステム
近接格闘術、身体操作方法、リラックス・健康法を含む、サバイブを主目的とした非破壊の武術を身につけられる
武術として機能させるための4大原則(呼吸、リラックス、姿勢、動き続ける)がある
トレーニングでは、柔軟かつ冷静な対応力、ぶつからない能力、緊張をコントロールできる身体などが養われる
トレーニングは、筋力を要さず、試合などもないため、誰もが自分のペースで続けられる
システマは、心身のパフォーマンスを引き出すノウハウが詰まっており、
その他のスポーツや日常生活の多くの問題を解決する助けになります。
私自身、システマのノウハウに感動し、
多くの人に理解・習得してほしいと思い、システマについての情報発信を始めました。
私たちは、ストレス社会と適切でない情報の下で育ったため、
知らず知らずの内に、心身にブレーキをかけながら、アクセルを踏んで生きています。
システマを身につけて、そのブレーキを外してみませんか?
以上~